当建築物のオーナーであるベンチャー企業が人材交流の場をつくるため、自社所有の別荘としてプロジェクトがスタート。しかし、設計が進むうちに、メンバー制でサブスクリプション利用する宿泊施設としての構想が持ち上がり、当初より居室や浴室、バーベキューテラスを備えた庭が拡張されて完成となった。
敷地は、冨津市西部の高台に位置する別荘地の一画。西側には東京湾を、北側には横浜の超高層ビルを望むことができ、南西側にはゴルフ場が近接している。勾配がある土地のため、1階の一部のみRC造で車庫とし、2、3階をSE構法で建てた。
2階にあたる玄関を入ると正面にアオモミジが伸びる植栽帯が現れ、まるでホテルのロビーのよう。花壇として土を70cmほどの厚みで入れ、木々の日光確保のため3階を吹き抜けに、天井にトップライトを設けている。
車庫の上にあたる部分はプライベートジムで、南側はサウナ設備もある大浴場。西側は寝室が2部屋あり、グループ利用を見越した設えだ。3階は植栽帯の吹き抜けを中心に、南側がリビング、北側はダイニングとキッチンにおだやかに区分され、それぞれ十分な広さのあるベランダが付く。東側にはダイニングから半階上がったライブラリースペースがあり、子どもたちの遊び場にちょうどいい。
W邸は一軒の家に集まったメンバーたちが、思いおもいの場所で歓談できる計画となっていて、人々の交流を生む装置の役割を担っていきそうだ。