【千葉県】中大規模木造の実務ポイントとSE構法の事例まとめ
千葉県における中大規模木造の実務では、まず計画段階で県内の森林資源の特徴や体制を確認することが重要です。
千葉県が推進する「木造化・木質化」や各種補助制度の要件を確認し、工法選択・資材調達・コスト試算といった段階で活用可能な支援を探ることが大切です。
設計者・施工者・行政・林業関係者が早期に情報を共有し、完成度の高いプロジェクトを目指す必要があります。
この記事では千葉県における中大規模木造の実務ポイントとSE構法の事例についてお伝えします。
<このコラムでわかること>
・中大規模木造の普及が進む千葉県の特徴
・千葉県内の建築物等における木材利用促進方針
・千葉県における公共建築物等の木材利用
・千葉県の中大規模木造に最適なSE構法の概要
・【千葉県のSE構法事例】温浴施設「おふろcafeかりんの湯」
・【千葉県のSE構法事例】宗教施設「弘教寺もんしんと会館」
・【千葉県のSE構法事例】公共施設「道の駅発酵の里こうざき」
・【千葉県のSE構法事例】幼児施設「こざくら保育園」
・【千葉県のSE構法事例】幼児施設「大空保育園」
・SE構法へのお問合せ、ご相談について
・まとめ
中大規模木造の普及が進む千葉県の特徴
千葉県は、首都圏に位置しながらも房総半島という地理的特性を有しています。
住宅・建築・木材の視点から見ると、都市化が注目されるエリアと、豊かな自然を有するエリアの両面を合わせ持つことが大きな特徴です。
県北部では土地を有効活用するための、都市型住宅の供給が集中的に行われてきました。
県南部の房総半島や内陸部に目を向けると、自然豊かな里山や森林地帯が広がり、古い木材資源が生活や文化と密接に長く続いてきた歴史があります。
スギやヒノキなどの針葉樹資源は、住宅や寺社、さらには漁船や舟大工の材料としても用いられ、地域の産業・文化を支えてきました。
このように伝統的な木材利用が根づく地域では、強い日差しや湿気、塩害、さらに台風などの気象条件と調和しながら発達してきた独自の建築様式が見られます。
軒の深い木造住宅や蔵造りの商家、舟運で栄えた佐原の町並みなどは、いずれも気候風土に適応し、機能美を追求して生まれました。
佐原(香取市)の商家群は江戸・明治時代の面影を色優先し、水郷エリアを象徴する景観として保存・観光活用が進められています。
ここでは舟運の発展による物流拠点として、多くの商家が木材を本体に重厚な建物を構えました。
伝統的な木造の店舗建築や旅館が歴史を物語る存在として数多く現存し、その独特の景観は千葉県の文化的財産として高い評価を受けています。
気候的には、太平洋に面する房総半島特有の暖かい海洋性気候と、東京湾を囲む湾岸エリアの湿度や台風など、様々な条件が建築設計に影響を与えています。
現代の千葉県では、伝統的な木造技術と最新のテクノロジーを組み合わせた建築手法が進化を遂げつつあります。
地元産の木材を活用した木造建築も注目され、これらを使った耐震性や省エネルギー性能に優れた中高層の木造建築の実証プロジェクトが進められています。
首都圏でありながら比較的広大な山林のある千葉県は、森林資源を循環させながら地域経済を活性化させる好例となる可能性を秘めており、持続可能なまちづくりの取り組みで大きな期待が集まっています。
さらに、観光や地域活性化の側面から見ても、千葉県の多様な建築・景観資源は大きな可能性を秘めています。
国や住民、個人などが協力して歴史的建造物や景観地区の保存・再生を意識して加速しており、古民家をリノベーションして店舗や宿泊施設に転用する事例もあります。
千葉県の住宅・建築・木材利用には、東京湾岸の都市化と房総半島の豊かな自然・文化という両極的な要素が絡み合いながら、それぞれの地域特性を活かす多様なスタイルが存在しています。
千葉県内の建築物等における木材利用促進方針
千葉県では「千葉県内の公共建築物等における木材利用促進方針」を策定し、公共建築物等における木材の利用の促進に努めています。
千葉県では、森林資源の循環利用と地域経済の活性化、さらなる地球温暖化対策等の視点から、県産木材の利用促進を積極的に推進しています。
新技術を含む木造建築の普及支援が大きな柱となっています。
まず、公共建築物での木材利用に関しては、建築の構造体だけでなく内装材や外装材、さらに備品に至るまで、県産木材を積極的に採用する方針が示されています。
建築実務者には初期段階での計画立案や、材料選定・見積りにおける地元業者との連携が求められます。
耐震性・耐火性・省エネルギー性など現代の建築基準を満たす高性能木造建築の実現に向け、新技術の導入・研修のサポート体制を強化することが挙げられています。
木材の活用事例を増やし、設計者や施工者に対する技術支援を行うことが目指されており、大規模施設への木材利用の可能性もあります。
環境面では、木材の利用拡大が森林の適切な管理や二酸化炭素の吸収・貯蔵に貢献するほか、地域経済活性化にもつながるという観点が強調されています。
建築実務者としては、設計段階での木材のライフサイクル評価や、省エネ基準適合のための断熱・気密仕様との両立に配慮が必要です。
それに加えて、施工段階でも地元産材の安定供給や加工精度の確保が課題となるため、県や製材所などとの連携を図りながら、トレーサビリティを含めた品質管理にも配慮することが重要になります。
本方針の主眼は、木材の利用を「公共から民間へ」「小規模から中・大規模へ」「伝統的工法から新技術活用へ」と拡大して、建築実務者には材料検討、設計手法、補助制度活用等の多岐にわたる視点での知識・対応力が求められます。
千葉県における公共建築物等の木材利用
公共建築物は、広く国民一般の利用に供するものであることから、木材を用いることにより、木と触れ合い、木の良さを実感する機会を幅広く提供することができます。
このため、建築物木材利用促進基本方針では、公共建築物について、積極的に木造化を促進することとしています。
林野庁の資料「森林・林業白書」によると、千葉県では下記のように木造率が推移しています。
・2017年度:
建築物全体(42.2%)、公共建築物(9.1%)、うち低層の公共建築物(20.3%)
・2019年度:
建築物全体(44.1%)、公共建築物(21.2%)、うち低層の公共建築物(34.4%)
・2021年度:
建築物全体(41.8%)、公共建築物(10.3%)、うち低層の公共建築物(27.3%)
2022年度以降に整備に着手する国の公共建築物については、建築物木材利用促進基本方針に基づき、計画時点においてコストや技術の面で木造化が困難であるものを除き、原則として全て木造化を図ることになっています。
千葉県の中大規模木造に最適なSE構法の概要
耐震構法SE構法(以下、SE構法)は、大規模木造建築物の技術を基に開発された技術です。
SE構法は構造計算された耐震性の高い木造建築を実現する、独自の建築システムです。
SE構法は耐震性の高さ、設計の自由度、コストパフォーマンスの良さ、ワンストップサービス等で高い評価を受けており、さまざまな大規模木造の実績が増えています。
SE構法は、単純に「剛性のある木質フレーム」というだけではなく、さまざまな利点を追求し、大規模木造で求められる大空間・大開口を可能にして、意匠設計者の創造性を活かせる設計の自由度を提供しています。
関連記事:耐震構法SE構法は全棟で立体解析による構造計算を実施
SE構法は「木造の構造設計」と「構造躯体材料のプレカット」そして施工というプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
その合理的なシステムが、設計・施工のプロセスにおいて納期や工期の短縮につながります。
関連記事:「ウッドショック等のリスクにSE構法のワンストップサービスが強い理由」
【千葉県のSE構法事例】温浴施設「おふろcafeかりんの湯」
SE構法による温浴施設の事例です。
これまではS造やRC造、大断面集成材でしかなし得なかった温浴施設の空間のスケールを、SE構法が切り拓いた木造建築です。
<「おふろcafeかりんの湯」の概要>
・用途:公衆浴場
・構造:木造(SE構法)
・階数:2階建て
・延床面積:496.26㎡
関連記事:SE構法の温浴施設の事例紹介「おふろcafeかりんの湯」
【千葉県のSE構法事例】宗教施設「弘教寺もんしんと会館」
SE構法による宗教施設の事例です。
「弘教寺もんしんと会館」は、千葉県市原市にある姉ケ崎駅から徒歩5分ほどのところに建つ浄土真宗本願寺派の宗教施設です。
<「弘教寺もんしんと会館」の概要>
・用途:寺院
・構造:木造(SE構法)
・階数:平屋
・延床面積:392.51㎡
関連ページ:SE構法の宗教施設の事例紹介「弘教寺もんしんと会館」
【千葉県のSE構法事例】公共施設「道の駅発酵の里こうざき」
SE構法による道の駅の事例です。
レストラン、発酵市場、新鮮市場で構成されています。
<「道の駅発酵の里こうざき」の概要>
・用途:公共施設
・構造:木造(SE構法)
・階数:2階建
・延床面積:995㎡
【千葉県のSE構法事例】幼児施設「こざくら保育園」
SE構法による保育園の事例です。
大空間の遊戯室や広いテラスが特徴の幼児施設です。
<「こざくら保育園」の概要>
・用途:幼稚園・保育園
・構造:木造(SE構法)
・階数:平屋建
・延床面積:717㎡
【千葉県のSE構法事例】幼児施設「大空保育園」
SE構法による保育園の事例です。
大開口・大空間の遊戯室や、開放的な外部空間が特徴の幼児施設です。
<「大空保育園」の概要>
・用途:幼稚園・保育園
・構造:木造(SE構法)
・階数:平屋建
・延床面積:1,200㎡
SE構法へのお問合せ、ご相談について
非住宅木造をSE構法で実現するための流れは下記となります。
1.構造設計
SE構法を活用した構造提案を行います。企画段階の無料の構造提案・見積りから、実施設計での伏図・計算書作成、確認申請の指摘対応等を行っております。また、BIMにも対応可能です。
2.概算見積り
SE構法は構造設計と同時に積算・見積りが可能です。そのため躯体費用をリアルタイムで確認可能で、大規模木造の設計において気になる躯体予算を押さえつつ設計を進めることが可能です。
3.調達
物件規模、用途、使用材料を適切に判断して、条件に応じた最短納期で現場にお届けします。また、地域産材の手配にも対応しております。
4.加工
構造設計と直結したCAD/CAMシステムにより、高精度なプレカットが可能です。また、多角形状、曲面形状などの複雑な加工形状にも対応可能です。
5.施工
SE構法の登録施工店ネットワークを活用し、計画に最適な施工店を紹介します。(元請け・建方施工等)
↓SE構法へのお問合せ、ご相談は下記よりお願いします。
https://www.ncn-se.co.jp/large/contact/
まとめ
非住宅木造においては、SE構法の構造躯体の強みを活かした構造設計により、コスト減、施工性向上を実現することができます。
SE構法は構造用集成材の中断面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用していただければと考えております。
スパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用することも可能です。
計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用していただき、ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に設計実務を進めることが可能です。
集成材構法として実力・実績のある工法の一つが「耐震構法SE構法」です。SE構法は「木造の構造設計」から「構造躯体材料のプレカット」に至るプロセスを合理化することでワンストップサービスとして実現した木造の工法です。
また構法を問わず、木造の構造設計から構造躯体材料のプレカットに至るスキームづくりに取り組む目的で「株式会社木構造デザイン」が設立されました。
構造設計事務所として、「⾮住宅⽊造専⾨の構造設計」、「構造設計と連動したプレカットCADデータの提供」をメイン事業とし、構造設計と⽣産設計を同時に提供することで、設計から加工までのワンストップサービスで木造建築物の普及に貢献する会社です。
株式会社エヌ・シー・エヌ、株式会社木構造デザインへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。