SE構法の大規模木造建築「認定こども園完成見学会」を開催
中大規模木造の普及に向けてNCNでは定期的にイベントを開催しています。今回は、山梨県中央市で認定こども園の完成見学会を開催させていただきました。地元の設計事務所様を中心に30名を超える方に参加していただきました。見学会には、今回の建築を設計監理された設計者の方にも参加してもらい、計画の経緯や設計のポイント、大規模木造に関するコメントなどを話してもらいました。それに加えて、NCNからは中大規模木造に関する情報や、この建築の構造設計のポイント、SE構法の魅力についてお伝えしました。
<このコラムでわかること>
・認定こども園の完成見学会の概要
・認定こども園の設計者である飯野建築工房様の解説
・設計事務所が大規模木造でSE構法を使うことのメリット
・認定こども園の完成見学会でのSE構法の概要説明
・認定こども園の完成見学会でのSE構法の構造設計と技術の解説
・認定こども園の完成見学会での参加者の感想
認定こども園の完成見学会の概要
認定こども園の完成見学会を山梨県中央市で開催しました。建物規模は、延べ面積が約1,500m2の平屋建ての建築です。地元の設計事務所様を中心に30名を超える方に参加していただきました。
この建築は、SE構法による大規模木造として計画されました。当初より発注者の意向で「木造の園舎」という方針があり、計画当初よりSE構法の類似施設を見学していただくなどのプロセスを経て、認定こども園の園舎の構造躯体としてSE構法をご採用いただきました。
今回の見学会は、発注者、設計者、施工者の皆様のご厚意により、お引渡し直後の貴重なタイミングで完成見学会を開催させていただくことができました。改めて御礼申し上げます。
認定こども園の設計者である飯野建築工房様の解説
設計監理は、株式会社飯野建築工房様です。飯野建築工房様は、「福祉」に特化した建築設計事務所です。幼児向け施設、高齢者向け施設、障がい者向け施設の設計監理業務を得意とされています。
代表の飯野高明氏からは、幼稚園や保育園と比較してまだ情報が不足しがちな認定こども園の法規や用途についての解説をしていただきました。
飯野氏からは、認定こども園の建て替えプロセスから、建築の概要を説明してもらいました。今回の認定こども園の設計のコンセプトは、敷地を有効に活かしたゾーニングと、快適さと使い勝手を両立させたプランニングです。
図面を使って、設計のポイントも伝えてもらいました。掃除やメンテナンスも重要な要素となるため認定こども園の仕上げ材選定のコツの話もありました。既存園舎の時代は給食がありませんでしたが、新園舎では給食にしたいということで、計画上の大きなポイントになったとのことです。
木造の園舎として断熱性能を高めることで、鉄骨造で建てられた旧園舎と比較すると、より快適な温熱環境が期待できます。実際に空間を体感しましたが「夏涼しい空間」も実現されていました。
設計事務所が大規模木造でSE構法を使うことのメリット
飯野氏は、SE構法の設計実績が豊富な設計者です。住宅から福祉施設まで数多くの木造建築でSE構法をご採用いただいています。飯野氏は、施設建築を手がける際には、まず「木造」の可能性を検討するようになったそうです。
飯野氏からは、「今や技術の進化により、木造建築でも決して鉄骨造やコンクリート造に劣らない耐震性、安全性、耐久性を誇る大空間の建物をつくることができます。公共建築物などの木造化は国が後押ししていますし、エコの観点からも、そしてなにより、住まう人や使う人の健康面から見ても一番に提案したいのが木造と考えています。」というコメントもありました。
また、「木質ならではのあたたかみと、大幅なコストダウンも魅力のひとつ。」とのことでした。
飯野氏によると、木造で大きな建物をつくることには慣れていない建築設計事務所が多い中、木造の経験や実績があることで、設計事務所としての「差別化」が実現できているそうです。
飯野氏からは、見学会の参加者に向けて、SE構法のリピーターとして「非住宅の建築でSE構法をうまく使うコツ」についても話がありました。
・計画段階からNCNの特建事業部に相談することで、木造建築に関する知見をうまく利用する
・ファーストプランの段階から構造計画を相談することで、合理的に構造設計を進められる
・SE構法は構造用集成材の中段面部材(柱は120mm角、梁は120mm幅)が標準なため、住宅と同等の部材寸法でスパン8m程度までの空間を構成できるコストパフォーマンスをうまく活用する
・遊戯室などスパンが10mを超える空間は、特注材やトラス、張弦梁などを活用する
・燃えしろ設計についてはSE構法独自の特許があり、梁幅を変えずに梁せいをあげる設計で可能なため標準材での対応も可能となり、あまりコストアップにならない利点も活用する
今回の認定こども園の設計においても、発注者の要望として「木を現しにした内観デザイン」があり、そうした点に配慮された設計とのことです。木造の建築は、耐火、準耐火の話をどのようにクリアするかがポイントになりますので、参加者の皆様も熱心に質問されていました。
認定こども園の完成見学会でのSE構法の概要説明
NCNからは、まず会社概要とSE構法の開発の経緯から説明させていただきました。SE構法は、住宅、非住宅あわせて、累計で2万棟以上の構造材出荷実績があります。
SE構法が誕生するきっかけとなったのは、「阪神大震災」です。大災害の中で特に多くの木造住宅が耐震性の不足により倒壊したことを受け、木造の弱点を克服する技術を開発するために、大規模木造建築の技術やシステムを応用することで、SE構法を開発しました。
NCNが提供する主なサービスは下記となります。
・木造化の構造提案:コンペ、プロポーザルなどの構造計画支援
・構造設計に関する業務全般:構造計画サポート、構造の実施設計、申請業務
・省エネ法届出および適合支援
・構造材の国産材対応
・大空間の対応:スパン10mを超える空間をトラスや張弦梁などで対応
・混構造対応:RC造との混構造案件
・木造に関するイベントの開催:セミナー、見学会
認定こども園の完成見学会でのSE構法の構造設計と技術の解説
SE構法とは木造の構造躯体に関する設計、プレカット、施工までの生産プロセスをNCNが管理し、ワンストップサービスで安全な建築を提供するシステムです。SE構法は、許容応力度計算による全棟構造計算をベースに、SE金物、Sボルト、耐力フレーム、耐力壁などの特殊な技術があります。
SE構法の材料や金物の解説もスライドを用いて説明させていただきました。SE構法の耐力壁の仕様は、構造用合板貼りとなっています。
本案件の構造設計の担当者より、今回の認定こども園におけるSE構法の構造設計のポイントについても解説いたしました。構造設計の主なポイントは下記です。
・建築の形状がコの字型の構成となっているため、ブロックを3つに分けて構造設計を実施
・構造躯体の基本的な木造断面は柱は120mm角、梁は120mm幅の構造用集成材の標準材で構成
・主な居室が勾配天井となっており、登り梁を用いた構造形式を採用
・45分準耐火構造の要求があったため、構造材の現し部分は燃えしろ計算で対応
・遊戯室は短辺方向のスパンが約12mあるため、大断面の特注材を用いて対応
・円型のホール部分は、特注金物を制作して「多面体」として設計、架構に対応
・意匠設計の庇を大きくはね出したいという要望に応える架構形式やディテールの提案
大規模木造においては、構造設計完了後のプレカット工場とのプレカット調整も重要になります。
また基礎の施工や、材料の搬入や建て方の手順なども事前の調整が多く必要となるため、施工会社である有限会社伊東工務店様とのやりとりも重要でした。今回の現場では、伊東工務店様の高い施工能力や綿密な段取り、調整により、無事に木造躯体を施工していただきました。
認定こども園の完成見学会での参加者の感想
説明の後は、参加者の皆様に自由に施設内を見学していただきました。
参加者は地元の設計事務所の方が多かったので、積極的に関係者に質問などをされていました。なかなか完成後の認定こども園を見学できる機会は限られておりますので、じっくりと見学される方が多かったです。
参加者の皆様からは、木造による約1500m2の建築を、鉄骨造やRC造と比較して大幅にコストダウンが図れたこと、短い工期で実現されたこと、施工品質について、特に高く評価していただきました。遊戯室などの大空間に感嘆されていた方が多かったです。
まとめ
今回の完成見学会では、主に山梨県内の設計事務所様にご参加いただきましたが、県外や遠方の方からのお申し込みもあり、木造建築に関する関心の高さを改めて実感することができました。今回は設計監理を担当された設計者より木造建築の設計ポイントや、NCNよりSE構法の概要や木造建築のメリット、NCNのさまざまなサービスについてお伝えさせていただきました。
認定こども園のような幼児施設を計画する際に、木造(SE構法)が他工法と比較して優位性がある点として、以下の項目が挙げられます。
・重量が軽いことで、地盤や基礎コストが大幅に低減できる
・工期が鉄骨造やRC造より短縮できる
・減価償却
・省CO2
・室内環境が良い
アンケートの内容もとても好意的なコメントが多く、建築実務者の皆様のお役に立ててよかったです。今後もこのような見学会を開催していきたいと考えています。
NCNへのご相談は無料となっておりますので、お気軽にお問い合わせください。